2000年3月から新しい会計基準が採用され、大企業では従来の財務諸表に加えてキャッシュフロー計算書の作成が
義務付けられました。
中小企業においても、お金の流れを把握しておくことはとても大切です。
キャッシュフロー計算書の作成の重要な目的は、自社で生み出したお金で経営できるような体質に改善するために、
お金の流れを把握することです。
キャッシュフロー計算書 会社のお金が何によってどれだけ増減したのかを原因活動別にわかりやすくまとめた計算書 |
キャッシュフロー計算書は、貸借対照表や損益計算書では読み取ることができない、お金の動きに関する情報を明確に
するために作成されます。
お金=儲けではない
(例)
売掛金120/売上120 仕入90/買掛金90 販売費一般管理費20/現金20
現 金100/売掛金100 買掛金60/現金 60 (商品在庫) 商品20/仕入20
損益計算書 売上高 120−(売上原価 70(仕入90−20))−販売費一般管理費20=利益30 |
貸借対照表 売掛金回収100−買掛金支払60−販売費一般管理費支払20=現金残高20 |
キャッシュフロー計算書(間接法) 損益計算書の利益30−売掛金増加20+買掛金増加30−商品在庫20=現金残高20 |
キャッシュフロー計算書の意味 営業活動によって増えた現金は20である |
現金の収支時期と収益費用の計上時期がずれるため現金=利益ではない
儲かっているが、お金がないという原因はここにある
キャッシュフロー計算書が明らかにするもの
キャッシュフロー計算書は3つの活動別にキャッシュフローをとらえます
営業活動によるキャッシュフロー | 投資活動によるキャッシュフロー | 財務活動によるキャッシュフロー |
会社の本業である営業活動が順調で利益を出しているか | 将来の企業の発展を考える上で、どのような部分に投資の重点を置いているか | どのようなところから資金を調達し返済しているか、株主への配当が多いか |
商品や製品などの売買による活動が中心 | 有価証券や固定資産などの投資による収入と支出を記載 | 借入れや株式の発行による収入と借入れの返済・配当金などの支払い |
営業キャッシュフローで十分な資金を得て、これをもとに将来のリターンを期待できる投資
対象に資金を投資し、借入金の返済を積極的にできるような状態が理想的
キャッシュフロー計算書における「キャッシュ」の範囲
現金+現金同等物
現 金 | 手許現金・要求払預金(当座預金・普通預金・通知預金) | |
現金同等物 | 取得日から満期日または償還日までの期間が3ヶ月以内の短期投資目的の定期預金 | 譲渡性預金 裏書等の方法で他人に譲渡可能な流通性のある預金(CDまたはNCD) |
コマーシャルペーパー 投資家や個人に発行して会社の資金を調達するもの (CP) |
||
売戻し条件付現先 上記の譲渡性預金等を担保とした短期貸付金 |
公社債投資信託 投資信託の一種で、公債・社債を中心とした財産を運用したもの。 |
キャッシュフロー計算書の作成方法には2種類あり、上記のように損益計算書の利益額に一定
の項目をプラスマイナスする形で営業活動によるキャッシュフローを求める方法を間接法と
いいます。もうひとつの方法は、営業活動によるキャッシュの出入りを、売上収入100・商品の
仕入支出60・販売費一般管理費支出20というように直接集計して総額表示する方法で
直接法といいます。
直接法では整理集計に手数がかかるので間接法によるのが一般的ですが、会計ソフトで両方の
作成に対応しているものを使用される場合には、直接法の方が分かりやすいのではないかと思い
ます。
下記に同じデータで作成された両方の方法によるキャッシュフロー計算書があります。見比べてみ
てください。
いずれの方法によっても結果は同じなのですが、営業活動によるキャッシュフローの表示内容
が違います。
直接法によるキャッシュフロー計算書
各項目ごとに資金の出入りをを総額で示す方法
T 営業活動によるキャッシュ・フロー | ||
営業収入 | 119,651,760 | |
原材料又は商品の仕入支出 | -44,838,997 | |
人件費支出 | -60,864,949 | |
その他の営業支出 | -10,001,815 | |
小計 | 3,945,999 | |
利息及び配当金の受取額 | 3,995 | |
利息の支払額 | -537,400 | |
その他の営業外収益の受取額 | 135,912 | |
法人税等の支払額 | -1,448,700 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 2,099,806 | A |
U 投資活動によるキャッシュ・フロー | ||
定期預金の払戻による収入 | 500,000 | |
積立預金の預入による支出 | -1,200,000 | |
有形固定資産の取得による支出 | ||
その他の投資による支出 | -62,400 | |
投資活動によるキャッシュ・フロー | -762,400 | B |
V 財務活動によるキャッシュ・フロー | ||
長期借入金による収入 | 3,000,000 | |
長期借入金の返済による支出 | -3,429,120 | |
財務活動によるキャッシュ・フロー | -429,120 | C |
W 現金及び現金同等物の増加額(-減少額) | 908,286 | A+B+C |
X 現金及び現金同等物期首残高 | 4,828,852 | |
Y 現金及び現金同等物期末残高 | 5,737,138 |
間接法によるキャッシュフロー計算書
当期利益を求めた後に、減価償却費などの非資金費用(現金の支出を伴わない費用)
と運転資金を前期の数値と比較して求めた差額を加減して計算する方法
T 営業活動によるキャッシュ・フロー | ||
税引前当期純利益 | 3,803,604 | |
減価償却費 | 2,692,115 | |
貸倒引当金の増加額 | 29,793 | |
受取利息及び受取配当金 | -3,995 | |
支払利息 | 537,400 | |
その他の営業外収益 | -135,912 | |
未払消費税の増加額(-減少額) | 1,645,500 | |
前払費用の減少額 | 100,000 | |
未払金の減少額 | -166,464 | |
未払費用の増加額 | 33,000 | |
売上債権の増加額 | -4,173,240 | |
棚卸資産の減少額 | 405,684 | |
仕入債務の増加額(-減少額) | -139,550 | |
その他の流動資産の減少額(-増加額) | 85,000 | |
その他の流動負債の増加額(-減少額) | -766,936 | |
小計 | 3,945,999 | |
利息及び配当金の受取額 | 3,995 | |
利息の支払額 | -537,400 | |
その他の営業外収益の受取額 | 135,912 | |
法人税等の支払額 | -1,448,700 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 2,099,806 | A |
U 投資活動によるキャッシュ・フロー | ||
定期預金の払戻による収入 | 500,000 | |
積立預金の預入による支出 | -1,200,000 | |
有形固定資産の取得による支出 | ||
その他の投資による支出 | -62,400 | |
投資活動によるキャッシュ・フロー | -762,400 | B |
V 財務活動によるキャッシュ・フロー | ||
長期借入金による収入 | 3,000,000 | |
長期借入金の返済による支出 | -3,429,120 | |
財務活動によるキャッシュ・フロー | -429,120 | A+B+C |
W 現金及び現金同等物の増加額(-減少額) | 908,286 | |
X 現金及び現金同等物期首残高 | 4,828,852 | |
Y 現金及び現金同等物期末残高 | 5,737,138 |
詳しい内容については別メニューで取り上げます。