手形とは、「いつ、いくらのお金を支払います」と約束するもので、小切手と同様に当座預金を開設している
場合に利用できます。
小切手とちがうところは、小切手はすぐに換金できますが、手形は通常2・3ヶ月後の支払期日までは、原則と
して代金を受け取ることができないというところです。
また、売掛金はいちおう支払日は決められてはいるけれど、延期を求められるとつきあいの関係で断れないような場合も
ありますが、手形は約束の日(支払期日又は満期日という)が来ると強制的に支払わなければならなくなる点が大きく違い
ます。
したがって、手形を振り出す会社は手形の支払期日には支払資金を必ず用意しておく必要があります。
手形には使用目的によって2種類あります
約束手形・・・振出人(手形を作成して他人に手渡す人)が最後に手形を持っている人に対して、手形に記載された金額を一定の期日に支払うことを約束する手形。
AはBからの仕入代金支払のため約束手形を振り出して手渡した。 |
為替手形・・・売掛金のある相手に対してその売掛金を減らす代わりに、自社の仕入先に支払をしてもらうよう
な場合に使われます。為替手形は、外国貿易の決済や一部の業者間での決済などに使われています。
一般的には約束手形がよく使われます。
約束手形について以下説明します。
A | 約束手形の文字(印刷済み) |
B | 振出人の管理番号(印刷済み) |
C | 受取人名(手形を受け取る会社名・代表者氏名など) |
D | 支払期日(支払金の受け取りが可能になる日付)満期日 |
E | 支払地(支払銀行の所在地・印刷済み) |
F | 支払場所(振出人が当座預金を開設している銀行名・印刷済み) |
G | 支払金額(チェックライターを使用する 金額の前には\マーク、後ろには※をつ ける)手書きの場合には漢数字で記載する |
H | 支払委託の文章(印刷済み) |
I | 振出日(手形が振り出された日付) |
J |
振出地(振出人の所在地) |
K | 振出人の住所・会社名・代表者氏名および銀行印の押印 |
L | 収入印紙の添付・消印・控えとの境目に割り印する |
約束手形の記載例
No.00003手形番号(連番) 約束手形 A AB 12345 B |
|||||||||||
L 収入印紙の 添付・消印
|
住所 東京都港区○○1−2−3 C 株式会社 B商事 殿 G 金額 \5,000,000※ 上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引換えにお支払いいたしますH 平成×年9月5日I 振出地 東京都港区××5−6−7 J 住 所 振出人 株式会社A商会K 代表取締役 森村 太郎 |
|
手形の控え欄は手形を作成するときに、右の手形部分の内容をすべて書き写し、振出人側で保管します。
手形は基本的に支払期日を待って期日を含む3日以内(土日をはさむ場合には土日を除いてカウント)に銀行に取り立て依頼をし、換金します(決済)。
他の代金の支払に充てるため譲渡(裏書)したり、資金繰りの苦しいときに銀行に一定の割引料(割引〜満期日までの利息)を支払い、満期日まで待たずに換金してもらうこともできます。(銀行に裏書譲渡をして手形を買い取ってもらう)
手形の裏書譲渡
裏書譲渡とは、手形の裏面(裏書欄)に必要事項を書き込み、自社の支払などに充てるため、他人に手渡す(手形金額を受け取れる権利を譲渡する)ことです。
手形を持っていると支払期日には記載金額を受け取ることができるのですが、その手形代金を受け取れる権利を譲ることもできるので、支払手段として使用されることもよくあります。
(例)
振出人裏書 裏書
( 且R田商店) (蒲髢リ商事) (田中商会梶j
手形の裏面の記入例
表記金額を下記被裏書人またはその指図人へお支払いください | 裏書文句(記載済み) | |
平成×年9月20日 拒絶証書不要 住所 東京都港区○○1−2−3 株式会社 山田商店 (受取人A) 代表取締役 山田 太郎 (目的) |
最初受取人となっていた山田商店が 鈴木商事に裏書譲渡したため、裏書人欄に 記入する 目的欄は通常何も記入しなくてよい |
|
被裏書人 | 株式会社 鈴木商事 B Aから裏書を受けた人 |
被裏書人と次の裏書人の名前は必ず一致する |
裏書人 平成×年9月30日 他の記載事項は上記同様 株式会社 鈴木商事 B Cに裏書する人 |
その次以降の裏書場所にも上記と同様の内容を記載する | |
被裏書人 | 田中商会 株式会社 C Bから裏書を受けた人 | 裏書欄の最後の被裏書人→所持人 |
裏書欄の一番上:最初に手形を受け取った人
裏書欄の一番下(被裏書人):最後に手形を所持している人→手形代金を受け取ることができる人
裏書欄を見れば手形の行く先をたどることができます。
小切手と同様、当座預金の残高管理に気を配る必要があります。
支払期日が到来すれば、当座預金から自動的に手形金額が引き落とされます。
必ず前日までに資金の補充を心がけます。万一、残高不足となったときには、「不渡り」となり、2回以上の不
渡りで銀行取引停止処分をうけ、事実上の倒産というところまで追い込まれます。手形を発行する会社はこのよ
うなリスクを常に負っていますから、手形帳の控えには金額・振出日・支払期日、支払先を明確に記して手形記
入帳等やエクセル等のソフトを利用して徹底的に管理します。
手形帳の盗難・不正使用に注意します。
収入印紙の貼り忘れに注意します。
盗難・紛失に注意し金庫に保管します。
呈示期間内に取立て依頼を忘れないようにします。遠隔地が支払い場所になっている場合は輸送期間
もあるので支払期日の1週間前までには必ず銀行に持ち込みます。
手形を銀行で割引をしてもらう場合には、高利率の割引料が差し引かれますから、よっぽどの場合は別
にしてできる限り期日まで待って換金するようにしましょう。
なお、銀行では会社ごとの割引限度額が定められていますので、その限度を超える割引はできません(優良
企業の手形は別枠で限度額を決めてもらえます)。
各銀行ごとに割引手形の残高を管理しましょう。
受け取った際には記載事項に不備がないか裏書された場合には、裏書がきちんとされているか確認します。
手形を裏書または割引に出した場合において、その手形の振出人(支払人)の支払能力がなく不渡りと
なった場合、裏書または割引した者にさかのぼって請求される可能性があります。支払期日に無事決済され
るまではその偶発債務を管理します。
通常、手形の管理は受取手形記入帳又は支払手形記入帳で行いますが、大量の手形取引がある企業においては、アクセス等のプログラムを用いて手形を管理するとさまざまな条件による検索ができ大変便利です。
手形には収入印紙を貼らなければなりません。印紙の金額は券面金額に応じて決められているので、複数の手形
に支払額を分割して振り出すようなことが一般的に行われます。
{参考資料}
|
|
|
|
※一般的には支払期日(満期日)を指定して作成しますが、支払期日の記載のない手形(一覧払い)が使われることがあります。この場合には、手形の記載要件を欠きますが例外的な扱いとして、呈示した時点で手形代金の支払を受けられます。