森村会計事務所

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業務内容

開業時・創業時のQ&A

・ 開業後に必要な届け出書類にはどのようなものがありますか?  
   個人事業者が開業した場合に提出する主な書類には下記のようなものがあります。


届出先 届出書類 提出期限と注意点
所 轄 税 務 署 個人事業の開廃業等届出書 事業開始から1ヶ月以内。
所得税の青色申告承認申請書 3月15日又は業務開始日から2ヶ月以内のいずれか遅い日
給与支払事務所等の開設届出書 給与支給開始日から1ヶ月以内
青色事業専従者給与に関する届出書 3月15日又は、業務開始日から2ヶ月以内のいずれか遅い日
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書 給与支給開始日の前月末まで(給与受給者が10人未満の場合に適用可)


 
・ 青色申告とは何ですか?
 
     
   所得税の確定申告の方法には、青色申告と白色申告という種類があります。青色申告できる方は、申告内容に不動産所得・事業所得・山林所得がある方です。青色申告できる方はある程度きちんと記帳・帳簿ができている方ということになっています。
しかし、白色申告の場合も帳簿がなくて良いわけではありませんので、実質記帳や帳簿にかける労力はあまり変わらないように思います。

なお青色申告の要件として税務署に対し、予め「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。なお「青色申告承認申請書」には、提出期限が決められています。その年の3月15日と、開業後2カ月以内の日のいずれか遅い日までに所轄税務署に提出すると開業初年度から青色申告をすることができます。既に白色申告をしている場合等の場合は、その年の3月15日までにこの申請書を提出しておくと、その年から青色申告をすることができるようになります。

おもな青色申告の特典には次のようなものがあります。
1 青色申告特別控除
決算書の作成状況に応じて決算所得から更に10万円又は65万円を引いてくれます。領収書のいらない、お金の出ていかない経費があるようなものなので青色申告にして記帳をきちんとしたメリットになります。

2 青色事業専従者給与が出せる
所得税においては、同一生計親族に対しては、いかなる名目でお金を支払っても経費処理できませんが、青色事業専従者として登録している親族で従業員と同様に事業に従事している等の要件を満たしていて、妥当な金額の給与支給であれば経費処理できます。
但し、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していることが要件です。

なお白色申告の場合でも事業専従者控除という控除がありますが、年間の控除額の上限が決められています。青色事業専従者給与の場合には、従事内容に応じたものであれば上限はありません。

なお、青色事業専従者給与の場合も、白色事業専従者控除の場合もこれらの規定を利用すると扶養親族として取り扱われなくなりますので注意が必要です。

3 純損失の繰越
事業をしていると、年によると臨時の事情で決算所得が赤字となる年もありますが、青色申告をしていると、その赤字を翌年以後3年間の黒字と相殺することができます。また赤字の年の前年も青色申告していれば、前年の黒字と相殺して所得税の還付を受ける事もできます。
開業年は、特に開業経費がかさみ、赤字になる確立が高いですので、開業年から青色申告するメリットはあるかと思います。なお白色申告の場合は、赤字は、その年限りで切り捨てます。

4 減価償却の特例
10万円以上の設備資産を購入した場合には、減価償却費を通じて経費処理しなければならないというルールがありますが、青色申告をしていると一定の減価償却資産を購入した場合に通常よりたくさんの減価償却費を計上できる特別償却制度を利用できるようになります。一番使い勝手が良いのは少額減価償却資産の特例で、10万円以上30万円未満の設備資産であれば、原則一括経費処理ができるようになります。(最大300万円まで)特に開業年は、30万円までの設備資産はたくさん出てくるかと思いますが、これらを一気に経費処理できるのであれば、開業年から青色申告するメリットになります。
 
     
 ・  開業後の帳簿書類ははどのようにすれば良いですか?  
     
   □ 法人や、複式簿記を目指す個人事業者の方は、おおむね次のような補助帳簿を作成しておくことで、複式簿記による経理が可能となります。

1 金銭出納帳・・・・・事業所の現金管理をするための入出金明細を書いた帳簿

2 預金出納帳・・・・・預金口座の入出金を記載した帳簿(口座毎に作成する)

3 得意先元帳(売掛帳)・・・掛取引をしている得意先毎に作成した売上帳

4 仕入先元帳(買掛帳)・・・掛取引をしている仕入先毎に作成した仕入帳
5 給与台帳・・・・・・・・従業員に対する給与明細を集計した帳簿

6 受取・支払手形帳・・・・受取手形や支払手形の決済時期を管理する帳簿(手形取引がない場合は不要です。)

7 在庫表・・・・・・・・・毎月の商品在庫を商品別に集計したもの(決算時だけでも可)

   
□ 個人事業者で経理事務をできるだけ簡便にしたい方は、次のような補助帳簿を作成しておくことで、確定申告に最低限必要な損益計算書を作成できるようになります。

1 売上帳・・・・毎月の売上高を集計したもの

2 仕入帳・・・・毎月の仕入高を集計したもの
3 経費帳・・・・・仕入以外の経費について経費の種類ごとに個別に集計する帳簿
4  給与台帳・・・従業員に対する給与明細を集計した帳簿

5 在庫表・・・・毎月の月次の在庫を集計したもの(決算時だけでも可)

 
     
 ・  領収書等の整理方法や保存方法はどのようにすれば良いですか?  
     
   

領収書等は、事業に関連して自社で作成したものや、取引先から受け取ったりした書類ですが、例えば次のような書類が該当します。

・ 自社で発行した請求書の控えや領収書の控え
・ 注文書や受注契約書
・ 見積書
・ 取引先からの請求書類
・ 経費等の領収書類
・ 従業員の給与明細の控え
・ 借入金の契約書類
・ 預金通帳等
・ 現金出納帳
・ 他社との各種契約書類
・ 棚卸表

□ 領収書等の整理方法
整理方法としては、売上請求書・領収書綴り、仕入・外注の請求書・領収書綴り、一般経費の請求書・領収書綴り、各種契約書類綴りのように分類して整理保管することが望ましいです。綴じ方は市販のファイル等を利用して、発生月別に綴じ込んでいくのが一般的ですが、都合に合わせて取引先別に綴じても問題ありません。

綴じ込む期間ですが、個人事業者の場合は暦年が会計年度となりますので、1月1日から12月31日までをまとめます。そして、1年を終えた時に、継続的に確認する必要のある書類以外は、段ボール等にまとめて保管することになります。

□ 領収書等の保存期間
保存期間としては、青色申告や白色申告の方法にもよるのですが、原則7年分を保存しておくようにしてください。

  

 
     
 ・  減価償却資産とは何ですか?  
     
   減価償却資産とは、事業用の資産で購入価額が1単位当たり10万円以上の耐久性のある資産のことを言います。代表的なものは、建物、車、機械、備品、建物付属設備、ソフトウェア等があります。(余談ですが、土地は年月によって価値は下がりませんので、減価償却資産ではありません。)

これらの資産は、通常、長期間継続利用できますので会計上、耐用年数に応じた期間で経費処理することになっています。この時の経費処理を減価償却と言います。なお、耐用年数は、資産に応じて耐用年数が法令で定められています。

従って、減価償却資産に該当するものは購入時(支払時)には経費処理せず、一旦資産として計上し、経費処理は、減価償却費を計算して減価償却費の分だけ経費として認識されますことになります。

例えば、車(耐用年数6年)を7月に100万円で購入したケースを考えると、車を購入しただけでは、100万円の車両という資産を取得しただけで経費にはなりません。12月まで車を事業に利用していた場合に、減価償却費分だけ経費として処理できます。
減価償却費の計算は、通常「購入価額(100万円)÷耐用年数(6年)×6カ月(利用期間)÷12カ月(年間月数)」で概算計算できます。計算すると83,333円になります。

上記の例のように例え100万円を支払っていても経費処理できるのは、10万円弱ですので、減価償却資産を購入する場合は資金繰りと利益計算は大きく違ってきます。

なお、長期間継続利用できる資産であっても10万円未満の資産については、管理事務の省力化の観点から購入時に全額経費処理できるようになっています。更に、青色申告をしている事業者については、一定の要件の元で、購入価額が30万円未満の資産までであれば全額経費処理できる特例もあります。(時限措置)
 
     
 ・  仕入れた商品を自宅で使った場合には、何かすることがありますか?  
     
   商品や、製品を家事で消費したり、親族等に贈与したりした場合は、家事消費等による売上として収入計上することとなっています。

この場合の収入に計上する金額は原則、通常の販売価額です。ただし、これには特例もあって、販売価額の70%以上か、たな卸資産の仕入金額のいずれか大きいほうの金額で計上してもいいことになっています。

この家事消費等による収入については、確定申告する際の用紙にも記載欄があります。飲食店等の場合は、税務署サイドでは、あることが前提としてチェックされますので、計上漏れのないようにしてください。
 
     
 ・  事業を手伝ってくれる家族に対して給与を支給できますか?
 
     
   所得税においては、同一生計親族に対しては、いかなる名目でお金を支払っても経費処理できないのが、原則です。
但し、家族従業員については、一定の要件のもとで、給与処理が認められています。また、家族従業員として給与処理した場合は、配偶者控除や扶養控除等の所得控除は受ける事が出来なくなりますので注意が必要です。

□ 青色申告者の場合の要件
@ 事前に税務署に対して「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること。(提出期限は原則3月15日、事業を開始した場合は、3月15日と事業開始後2カ月以内の日のいずれか遅い日)
A 原則として、6月を超える期間事業に従事している事
B その家族従業員が15歳以上であること
C その支給する給与が、労務の対価として妥当な金額であること
D その支給する給与が、事前に提出した上記届出書に記載されている金額の範囲内であること
※上記の要件の範囲内で、支給した金額が給与として経費処理されます。

□ 白色申告者の場合の要件
@ その家族従業員が15歳以上であること
A 6月を超える期間事業に従事している事
B 確定申告書に経費処理した金額等を記載しておくこと
※ 経費処理できる金額の上限が決まっています。計算方法は次の通り。
次の内、いずれか少ない金額
1 専従者控除前の所得を専従者の数に1を加えた数で割った金額
2 専従者が配偶者である場合は、86万円。その他の家族の場合は一人当たり50万円
 
     
 ・   開業後、いつから消費税は納税しなければいけませんか?  
     
   個人で新規開業した場合には、原則として、開業後2年間は消費税は課税されません。なお、法人として開業した場合でも資本金1000万円未満の会社については、ほぼ同様の取り扱いです。(資本金が1000万円以上の会社は、特例として設立初年度より消費税が課税されます)

消費税が課税されるようになるのは、基本的には、年間売上高が1000万円を超えた場合に、その2年後からです。例えば、初年度の売上高が1000万円を超えたのであれば、3年目の確定申告から消費税の申告を行うことになります。

但し、平成25年(法人の場合は平成25年1月1日以後開始事業年度)以後は、上記判定に加えて、前年の上半期の6ヶ月間の売上高又は、給与支給額のどちらかが、1000万円を超えていると、その年は消費税の課税事業者となります。その為、この要件に該当する場合は、開業後2年目から消費税を納めることになります。

もう少し説明すると、今年消費税の申告が必要かどうかは、原則として2年前の売上高が、1000万円を超えているかどうか、そして次に1年前の上半期の6ヶ月間の売上高又は給与支給金額が1000万円を超えているかで判断します。この判断は毎年行います。通常、開業当初は、売上も給与も少ない事が多いので、新規開業の場合は、2年目から消費税が課税される事は少ないと思いますが、要件に該当した場合は、開業2年目から消費税を納めるケースもあります。また、この判定を毎年行いますので、毎年の売上高が1000万円前後で推移する事業主の場合は、免税の年と課税の年が、頻繁に入れ替わることもあります

更に説明を付け加えますと、上記で売上高が判断材料と説明していますが、消費税法でいう売上高には、商品を販売した際の売上高だけでなく、例えば、設備資産を譲渡した時の譲渡収入も含めて計算します。その為、決算書の売上は1000万円以下であっても、譲渡収入と合わせると1000万円を超えるような場合はその2年後は課税事業者となります。そのほか、非課税の規定などもありますが、ここでは割愛します。

なお、消費税の課税事業者となった場合の申告期限及び納付期限は、毎年3月31日です。(法人の場合は決算日から2カ月以内)


 
     
 ・  消費税で言う簡易課税とはどのようなものですか?  
     
   消費税の計算方法は、大きく本則課税方式と簡易課税方式に分かれます。
なお、簡易課税方式を選択するためには、次の条件があります。
1 税務署に対してあらかじめ「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しておくこと。
2 2年前の課税売上高が、5000万円以下であること。

消費税計算の基本的な考えでは、商品を売上げた際に預った消費税から、商品仕入等の際に支払った消費税を差し引いた差額を申告して納税します。会社には損得のない預り金が通過するだけのことなのですが、これを計算するには、手間がかかることから中小事業者向けに売上高が分かれば消費税を計算できるように設けられた特例制度が、簡易課税方式です。

簡易課税方式による計算の概要は、預った消費税額から、差し引く金額の計算を事業形態に応じた一定割合(みなし仕入率)を預った消費税額に乗じることで計算できるようにしたものです。
この場合の事業形態に応じたみなし仕入率は、次のようになっています。
1種事業(卸売業)       90%
2種事業(小売業)       80%
3種事業(製造業等)      70%
5種事業(サービス業等)   50%
4種事業(その他事業)    40%

文章で書くと分かりづらいので、以下に簡単な計算例を記載しておきます。
<<計算例の前提>>
・売上はすべて卸売販売によるもの(事業区分は、1種事業となります)
・売上高合計      3000万円(預り消費税150万円)
・仕入等経費合計   2000万円(支払消費税100万円)

1 原則課税方式で計算した消費税額
  150万円―100万円=50万円

2 簡易課税方式で計算した消費税額
  150万円―150万円×90%=15万円

上記の計算例でもわかるとおり、簡易課税方式では、仕入等経費にかかった消費税は計算に出てきません。売上金額と事業区分が分かるだけで計算できます。消費税は預り金が通過するだけのことですので、本来損得は出ないのですが、この制度を利用すると上記のみなし仕入率が、実際の支払った消費税と一致しませんので、損得が発生するようになります。
制度の良し悪しは別として通常は、簡易課税制度が有利な事業所は、簡易課税制度を適用し、不利な事業所は、本則課税制度で申告します。

注意点
1 2年前の課税売上高が5000万円を超えているとそもそも簡易課税制度は、利用できない。

2 前提条件である、「消費税簡易課税制度選択届出書」は、提出した年度の翌年度から有効になりますので、今年出しても、今年の確定申告には間に合わない。

3 簡易課税方式では、設備投資に伴い支払った消費税は考慮されませんので、設備投資が予定されている年度には、不利に働くことがあります。

4 一度簡易課税制度を選択すると、2年間は継続適用しなければならないので、選択する前に向こう2年分くらいの売上予測や設備計画も考えてシミュレーションが必要。簡易課税方式をやめるには、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要がありますが、提出した年の翌年の申告から切り替わりますので、提出した年度は引き続き簡易課税方式での申告となります。

5 場合によっては事業収入がどの事業区分にあてはまるか判断しづらい場合や、事業区分の異なる複数の事業収入がある場合や、同じ事業の中でも加工販売がある場合など上記のみなし仕入率の選定や計算自体が複雑になることがあります。事前シミュレーションをする場合は経理方法も含めて慎重に行う必要があります。なるべく専門家に相談しながら決定することをお勧めします。

 
     
 ・   開業設備類にかかった消費税が戻ってくる事があるのですか?  
 
結論から言えば、条件が揃っていれば消費税の還付を受ける事ができます。
その条件とは、下記の3つです。
@ 消費税の課税事業者であること
A 簡易課税制度を選択していないこと
B 設備投資等をした事で、多額の消費税を支払っている(支払消費税>預り消費税))

新規開業した時には、高額な設備投資を伴う事も少なくありません。そういった場合には、税務署に所定の届出書を提出して、本来免税期間であってもあえて、消費税の課税事業者を選択することで、還付を受ける事も可能です。

但し、課税事業者を選択して、開業時の設備資産の消費税の還付を受けた場合には下記のようなデメリットも生じます
@ 2年目と3年目も消費税の課税事業者を続けなければならない。(原則免税期間がなくなってしまう)
A 2年目と3年目は、簡易課税制度を選択できない。

従って、消費税の還付を検討する場合には、還付を受ける事が出来る金額と、本来、納税しなくても良い期間(原則として、開業後2年間)に納税する事となる金額、簡易課税制度を選択できない期間の差損も考慮して還付を受けるかどうかを判断する事になります。

※余談ですが、賃貸住宅の建設費用のような消費税の非課税売上を生み出すような設備類についてかかった消費税の還付を受ける場合は、上記規定に連動する調整対象固定資産の規定により、一旦還付を受けた消費税を3年目に再度納税するような仕組みが出来ています。

 
     
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